2010年5月5日水曜日

De-growth:プロダクトとしてのGDP

更新あいてしまいました、、

報告ですが、帰国日は6/5になりました。社会人も学生も忙しい時期だとは思いますが、みなさん飲みましょうー。




さて、今日はエントリー
「経済成長なしの世界」で書いた内容についてのアップデート。




まずは、この”成長を超えた生き方”というビデオを紹介。

Life After Growth - Economics for Everyone from enmedia productions on Vimeo.




登場するのは、環境活動家かつ哲学者のVandana Shivaや、ここのエネルギー資源グループの教授Richard Nogaard、や生態系の活動家Debal Deb(彼も、前学期住んでいたI-Houseに住んでいました。)


内容は、現実:世界全体で経済というパイの成長が続く中で、先進国と途上国がそのパイを奪い合う、を踏まえたうえで、その現実にどのように挑戦できるか、というきわめて前向きな内容。

方向性としては、


  ・世界経済のパイが一定のもと、先進国側が途上国に譲り、分配の割合を変える
  ・De-growth(逆成長)によりパイ全体をヘらし、そのうえで分配の比率を変える


の2つがある。また切り口としては、測り方の問題、ここではGDPに代わりうるものさしが紹介される。例えば、知ってる人も多いであろう、ブータンのGNH(Gross National Happiness)や、カナダのWell-being、後者でカナダを図ると、GDP基準のそれの遙か上をいくようだ。この尺度の側面からアプローチするのは現実的かつうまいやり方だと思う。一見、「なかみを変えずに尺度を変えても、何も変わらない」と思えるが、経済学者スティグリッツの言葉をかりると、


  
"Information about how we describe happiness affects what we strive for, and so if GDP is what we think as happiness we strive for it."

(人が目指すものは幸福の定義に左右される。GDPで幸福を定義しているから、みなGDPを目指しているだけだ。)



そもそも、開発経済の歴史をたどると、GDPは、差異こそあれ成長をめざす点でGNPと同じであり、そのGNPはWWⅡ中、ドイツに対峙していたアメリカで、戦力として自国の富の生産能力かを経済学者クズネッツが測ろうとしてつくられたもの。つまり、
GDPは70年も昔につくられた古いプロダクトであるということ。壊れかけた温度計を使っているようなもので、新らしい製品が必要だ。GDPに代わるには厳密性や単純性などクリアすべきハードルは多いのは事実だが。もっとも、ステグリッツ自身は、GDPの欠陥について、サステナビリティーや格差問題を捉えていない点を問題視するにとどめ、”成長”自体を問い直そうとはしていない。


しかし、以前、エントリー:フランスの超学歴社会でとりあげた、仏の典型的なエリートシステムに載っていないサルコジ*が、スティグリッツやハーバードのアマルティア・センを集め、2008年にThe Commission on the Measurement of Economic Performance and Social Progressという委員会を設置し、幸福やサステナビリティーの尺度としてのGDPの妥当性を検証・提言するとのこと。いまのところ見張った成果はでていないようだが、こういうイニシアチブはもっとされるべきだし、期待は高い。




最後に、経済成長について、”成長”がいいことなのか捉え直すことは、一見ネガティブな印象を与えるかもしれない。例えば、産業革命以前のような、マクロな生態系レベルでみてバランスが保たれていた時代に完全に戻ることは不可能にみえる。その意味で、ビデオにでてきたような森林での自足時給の生活は解決策にはなりえない。
(バークレーの影響でヒッピーを目指しはじめたわけでもないので、あしからず(笑))


しかし、世界すべての国が先進国並の水準になることは不可能にみえるし、また、過去10年でインターネットが世界を変えたように、既存よりベターなもの、GDPよりよい尺度をつくるのは十分に可能だ。次の10年で何でも変えられる。



*ビデオではサルコジが幸福に着目する理由は、カーラ・ブルーニとの私生活が幸せだから、と揶揄されている。


■参考

The Commission on the Measurement of Economic Performance and Social Progress
Richard Nogaard

0 件のコメント:

コメントを投稿