2010年2月22日月曜日

キャンパス立てこもりと刑務所民営化



このキャンパス立てこもりのビデオは、先学期の11月に、次学期から学部生の授業料が32%アップすることを受けて学生が行ったでデモ。Wheeler Hallという僕もよく授業にいく建物を完全に占拠、授業はキャンセル、逮捕者もでた。

これだけでも大事件だった。というのも、バークレーは全米の1960年代のフリースピーチ運動の発祥の地で、大学の校風としてはthe most liberal of the liberalなのだが、それ以来はこの規模での運動が行われることはなかった。そう考えると、すごいタイミングできてしまったなーと感じる。今でも、教育関連の修正法案が議会で提出されるタイミングなどで、頻繁にデモが行われている。


この背景にあるのは、州の予算不足なのだが、不足だけでなく、配分の問題も大きい。


右の数字をみると、教育と刑務所の予算配分がいかに反転したか、ということがわかる。移民が歴史的に多かったカリフォルニア州にとって、パブリックエデュケーションは他の州に比べ最もお金と力を注いできた分野で、バークレーの所属するUC (University of California) だけでなく、CSU (The California State University)など、いわば”売り”だった。


州知事のシュワちゃんは
  “What does it say about any state that focuses more on prison uniforms than on caps and gowns?" "It simply is not healthy.”
とのべ、「刑務所を民営化し、メキシコにお金を払い施設を建て、そこに犯罪者を収容する」提案をしている。


刑務所民営化、日本の感覚からすると大胆なように思えるが、実はすでにここでは、州外に建てられた施設で行われており、
民営化賛成派の上げるメリットとしては
  ・コスト削減
  ・収容能力拡大のスピード

反対派の根拠としては
 ・クオリティコントロールが行き届かない
 ・ゆえに再犯がふえ、治安悪化可能性

があげられているが、刑務所ないのクオリティを
 ・収容者同士の暴力
 ・収容者対看守の暴力

メイン2つでみると、民営化された刑務所は、州・連邦の刑務所施設に比べ、これらをより多く防げている。さらに刑務所内での教育プログラムなど他のクオリティも優っているという研究がでている。しかし、一方で、民営化された刑務所同士で比べると、クオリティの向上したものと、一部低下したものの差が激しいという事実があるので、官民間の契約によってなぜその差が生まれるのかの究明が課題。


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思ったのは、

民営化の議論は、”どこまで民営化/外注するか”というスコープ(範囲)の議論に帰結すると。例えば、どんな種類の刑務所でも、食堂、清掃関連は専門のサービス会社が入るだろう。
極論、経済的側面だけをみて、倫理・法的側面を除けば、官民の契約と競争が機能しクオリティコントロールが効く限り、すべて外に出せる

民営化を広くとり、外注も含めれば、国公立の大学・私立、ともに客員教授が増えているのも、この理由でしょう。
日本が軍事をアメリカにまかせているのも、日米安保という”契約”の下での、外注だろう。



ではでは



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<Notes>
Anna Lukemeyer and Richard C. McCorkle, Privatization of Prisons: Impact on Prison Conditions, The American Review of Public Administration 2006; 36; 189

The Economist, Jailhouse blues, http://www.economist.com/world/united-states/displaystory.cfm?story_id=15500687

OLIVER HART ANDREI SHLEIFER ROBERT W. VISHNY, THE PROPER SCOPE OF GOVERNMENT: THEORY AND AN APPLICATION TO PRISONS*, The Quarterly Journal of Economics, November 1997

3 件のコメント:

  1. ちょっと気になったのは、「遠隔地の刑務所に収容された犯罪者は、釈放後に戻ってくるのか?」ということ。
    メキシコだと遠すぎるかもだけど、たとえばカリフォルニアから南部に刑務所を外注したとして、釈放された者がそのまま南部に定着したりとかいうことはないのだろうか?
    もしそういうことがあるのであれば、それは内包型社会/排除型社会という問題に直接関わる政策なのかも。

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  2. 確かに、釈放後の遠隔地への定着がある一定数おこるなら、各コミュニティの治安向上の点で問題だね。たとえ州を越える場合は州法的もとの州にきちんと輸送するとしても、単身男性であれば仮釈放や保護観察に現地で家族ができることも少なくないだろうし。既婚者であればその可能性は低そう。

    結局は、犯罪者のモビリティが問題というよりは、職業訓練など、コミュニティベースでの社会復帰支援で、もともと中にいた犯罪者、排除されてきた犯罪者含め、社会がどれだけバックアップを作れるか、という問題に帰着すると思う。というのも、逆に、遠隔地でなく近郊に収容されたが、社会復帰できず遠隔地に自ら移住するパターンも多々あるとも思うので。

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